戸谷浩隆 著『未解決のまま、共にいるー ギフトで成り立つ共同体から生まれた愛を活かすつながりの実践哲学 ー 』

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シェアハウスでの暮らしに興味がある、コミュニティづくりのノウハウを知りたい、といった思いで、この本を手にとったあなたは、ちょっと驚くかもしれない。読み進めるうちに、自分が想像していたのより、もっと温かくて優しくて包容力に溢れた、大きい贈りものを手にしていることに気づくのではないか。 
辻信一(文化人類学者/明治学院大学名誉教授)
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サービスなし、役割なし、当番なし。 ギフトで成り立つ多国籍・多世代シェアハウス「ウェル洋光台」。 約35人が暮らすこの家での20年間の試行錯誤から、本書は生まれました。

テーマは「愛」と「つながり」。 エーリッヒ・フロムの愛の思想を起点に、エルダーシップ、ホールド、空気感など、これまで感覚として語られてきた共同体のスピリチュアリティを、実践の言葉として丁寧に解きほぐします。

人と人が未熟さや矛盾を抱えたまま共にいるための、愛を受け取る勇気と生きられた知恵を描いた一冊です。コミュニティづくりに関わる人はもちろん、家族や職場での関係に悩み、疲れたすべての人に寄り添い、読む人それぞれの歩みに、小さな気づきとあたたかな光が灯ることを願っています。

<目次>
一章 共に生きるということ ─ ウェル洋光台の物語
愛とは、ただ共にいること
やさしさと無関心が同居する世界
ウェル洋光台との出会い ─ 離婚を経て
出会いと始まりの物語
ウェル洋光台の発展と私の卒業
問題だらけのなかで育つ文化
光と闇のあいだで育つ日々
困りごとから問いが芽吹くとき

二章 愛を育む勇気と文化 ─ そこにある逆説
愛の上に家を建てることはできるのか ─ 私を導いてくれた問い
愛は語るべきなのか ─ 「分析的な知恵」と「生きられた知恵」
通り良き管としての愛 ─ 恵みと技のあいだで
鏡合わせ現象 ─ 噛み合わないまま響きあう
空気感 ─ 隠された文化の側面と、受け取る勇気
愛の五つのかたちと試練
闇のなかで光を手渡す ─ 恐れからではなく愛から動く
にもかかわらず愛が届かないとき ─ 支配されながら支配する関係

三章 見えない営みを称える ─ 無償の気遣いを受け取る「配慮」
受け取ることから始まる
サービスゼロという選択
名前も残らず言葉にもならない営み
サービスゼロの「現実」と配慮を素直に受け取る勇気
受け取る勇気から始まる五つの愛のかたち
取引的な公平と贈与論的な公平の狭間で

四章 共にいることを諦めない ─ つながりたい願いを信じる「責任」
つながりたい願いを信じる勇気
暮らしのなかでつながりを支える
自分の心も相手の心も手放さない
言うか言わないかを超えて
独りに戻る自由と共にいられる自由の狭間で
差異がひらく愛の風景 ─ ジレンマを抱いて文化は育つ

五章 ありのままを活かしあう ─ そのままでつながる「尊重」
ありのままでいる勇気
問題を味わい、共に抱える
どう在ってもいい場は、誰でもいていい場にならない矛盾
そのままでつながる
異端の光 ─ 若者・馬鹿者・よそ者の力
協調的な調和と多様性の調和の狭間で

六章 言葉の背景を聴きあう ─ 痛みに開かれ正しさをほぐす「知る」
正しさを緩める勇気
目の前にあるものを超えたところで出会う
本当に困り抜くということ
批評を超えて寄り添う
かたちを保つ秩序と再生を生み出す秩序の狭間で
言葉の背景を聴きあうことで乗り越える愛の試練

七章 共に世界を体験する ─ いのちの声に身を委ねる「信頼」
すでに私たちは信じられている
いのちの声に委ねる
迷いの声にも大切に耳を澄ます
場が生み出す直感に動かされて
霊性に開かれる ─ 惑いと導きを見分ける
コミュニティというもう一つの身体
分析的な洞察と根源的な洞察の狭間で

八章 信じる力の在処を探して ─ 愛と勇気の源流を辿る
根源的信頼の源泉へ、もう一歩深く
文化が息づく見えない領域
人の根源的信頼の源流 ─ 霊性の層
感性という光に導かれて ─ 魂の層
揺れと矛盾を抱きしめる力 ─ 心の層
しなやかな輪郭を生きる ─ アイデンティティの層
信頼の静かな流れに耳を澄ます

九章 文化の隠れた霊性 ─ 空気感を深掘りする
内なる宇宙と外なる世界
霊性と空性 ─ 文化の依って立つところにある余白
魂と詩性 ─ 美しいと感じること
心と声 ─ 隠された声に耳を澄ます
アイデンティティと構造 ─ 物語を保つしなやかな輪郭
文化は根源的信頼を育む小宇宙
愛と信頼を育む文化の原則

十章 そっと場を支える者たち ─ 「生きられた知恵」として
「役割」ではなく「佇まい」としてのエルダーシップ
街に動かされて ─ エルダーシップの実際
直線的発達を超えたところにある実存的な変容
「生きられた知恵」としてのエルダーシップ
「受け取る力」としてのエルダーシップ
あり方は、関係性のなかで実存する
開かれた揺らぎとしてのエルダーシップ
呼び出される存在としてのエルダーシップ
一人の声と多様な声の調和

十一章 余白に詩を宿す ─ 空性・詩性のエルダーシップ
文化を支える静かな佇まい ─ 誰もがエルダーとなる瞬間
場がどう在ろうとしているのかを起点にする
わからないことを、そのまま大切にする
場を「いのち」のように扱い、微かな声に耳を澄ます
日々の手仕事を祈りのように積み重ねる
名もなき美しさに喜びを見出す
包容力ある美しさを行き届かせる
暮らしの風景に溶け込む祈り

十二章 葛藤をしなやかに抱える ─ 声・構造のエルダーシップ
苦悩を恐れず、やわらかな輪郭を保ち続ける
葛藤や苦労を、焦らずに抱え続ける
異なる声や違和感を丁寧に迎え入れる
見えない願いが言葉になるのを支える
目立たない構造をしなやかに整える
異なる景色のあいだに橋を架ける
場の物語や知恵を情景豊かに語り継ぐ
気ままにやさしく、意味なく美しく生きる

十三章 理想が呪縛になるとき ─ 規範化の罠をほどく
理想がもたらす光 ─ 私たちを照らす道しるべ
理想がもたらす影 ─ 規範化と投影の罠
コミュニティに現れる規範と投影
「五つの勇気」の理想と影
エルダーシップと四領域の理想と影
ジレンマを抱える態度の理想と影
葛藤を本質的に抱える共同体
十四章 葛藤を生きる豊かさ ─ 信頼に育まれる心と文化
苦悩を抱え続けるという営み ─ なぜ葛藤のなかを歩むのか
無償性と相互性 ─ 与えることと受け取ることとの狭間で
関与と自律 ─ つながることと離れることとの狭間で
受容と変化 ─ ありのままでいることと変わっていくこととの狭間で
参与と規律 ─ 寄り添うことと責任を持つこととの狭間で
委任と制御 ─ 手放すことと手放せないこととの狭間で
信頼と省察 ─ 信じることと見抜くこととの狭間で
面倒から生まれる豊かさ ─ 苦悩の持つ大切な意味
十五章 暮らしに灯るいのち ─ この家でそっと生まれるもの
物語の余白から、次の旅が生まれる
困りごとから、この家にいのちの炎は灯った
苦労を抱えた日常が、文化を育む
未完成だからこそ育まれるもの
いのちのざわめきを保つために
「共に困る」という贈り物 ─ 矛盾を抱えながら共にいる
苦労を抱えるからこそ、祈り、踊り、共にいる
暮らしのなかで、そっと生まれるもの
謝辞
巻末付録
�� この本の全体地図
�� 用語集
�� 心の内面を扱うインナー・ワーク

■戸谷浩隆(とや・ひろたか)

1977年横浜生まれ。神奈川県横浜市在住。
多世代シェアハウス「ウェル洋光台」の大家で、二人の娘の父。妻を含めた家族四人で、ウェル洋光台で暮らす。父方の祖父母と妹を含めた六人家族で育つ。多くのコミュニティ運営者と同様、発達障害的傾向に苦労した腕白な子ども時代を過ごした。国際基督教大学教養学部を卒業後、東京工業大学理工学研究科修士課程に進学し、数学(幾何学)を専攻。大学院修了後、大手電機メーカーに入社し、翌年研究部門に配属。以来一貫してソフトウェア工学関連の研究開発業務に携わっている。2006年11月に開業したウェル洋光台に、翌年3月に住人として入居し、ウェル洋光台で出会った妻と結婚。2009年に一度卒業するが、2013年に運営難を機に家族と共に再入居し、再生を手がける。パーマカルチャーやティール組織の思想を取り入れた、「ギフト」で成り立つ暮らしの実践は、NHKドキュメンタリーや全国誌などでも紹介されている。日々の暮らしの中にある祈りと、「共に生きること」の豊かさ、矛盾を抱えた人間同士が抱える面倒さの中にふと訪れる恵みへの驚きは今も尽きることがない。
販売価格 2,000円(税込2,200円)

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